Zバッファと深度ステンシルステート
前回のパートで出力結合ステージのレンダーターゲットとブレンドステートについて見てきました。 今回は残りのZバッファ(英訳:Z-Buffer)と深度ステンシルステート(英訳:DepthStencilState)について見ていきます。 この2つは隠線消去という3Dレンダリングおいて重要な要素の制御を行うものになります。 ピクセルシェーダの出力を使用するかしないかはこの2つで決定します。
ドキュメント: 出力結合ステージ(日本語) Output-Merger Stage(英語)
概要
このパートではピクセルシェーダの後にその出力値を使うか使わないかをテストする深度テストとステンシルテストについて見ていきます。 この2つのテストはID3D11DepthStencilStateで制御します。 対応しているプロジェクトはPart07_ZBufferAndDepthStencilStateになります。
- 深度ステンシルビュー
- ID3D11DepthStencilState
- 深度テストの設定
- ステンシルテストの設定
- まとめ
- 補足
- Early Z
- ID3D11DepthStencilViewのクリア関数
深度ステンシルビュー
深度テストとステンシルテストではテスト結果をテクスチャに保存することができます。 保存するときは深度ステンシルビューを作成する必要があります。
作成
上のID3D11Device::CreateDepthStencilViewで深度ステンシルビューを作成しています。 作り方はレンダーターゲットと同じく今まで出てきたビューとよく似ています。
ドキュメント:
ID3D11Device::CreateDepthStencilView
(日本語)
(英語)
D3D11_DEPTH_STENCIL_VIEW_DESC
(日本語)
(英語)
深度ステンシルビューを作成するにはリソース作成時にBindFlagsにD3D11_BIND_DEPTH_STENCILを指定する必要があります。
リソースのFormatにはZバッファを表すD、ステンシル成分を表すSを持つものを使用してください。 Zバッファとして使用したリソースをシェーダリソースビュー等ほかの用途で使用したい場合は、リソース作成時にTYPELESSを持つものを指定し、ビュー作成時フォーマットを改めて指定する必要があります。
設定
設定は前回レンダーターゲットの設定した時に使ったID3D11DeviceContext::OMSetRenderTargetsで行います。
ドキュメント:ID3D11DeviceContext::OMSetRenderTargets
(日本語)
(英語)
ID3D11DepthStencilState
深度テストとステンシルテストはID3D11DepthStencilStateで同時に設定します。 この2つのテストの順序は深度テストから実行され、その後にステンシルテストが行われます。
設定
まず、グラフィックスパイプラインへの設定はID3D11DeviceContext::OMSetDepthStencilStateで行います。
ドキュメント:ID3D11DeviceContext::OMSetDepthStencilState (日本語) (英語)
作成
次にID3D11DepthStencilStateの作成はID3D11Device::CreateDepthStencilStateで行います。 ドキュメント:ID3D11DeviceContext::CreateDepthStencilState (日本語) (英語)
各テストの設定はD3D11_DEPTH_STENCIL_DESCで指定します。各テストの設定については分けてみていきます。
ドキュメント:D3D11_DEPTH_STENCIL_DESC
(日本語)
(英語)
深度テストの設定
まず、深度テストの設定は以下のメンバで行います。
D3D11_DEPTH_STENCIL_DESC 深度テストに関係するメンバ
- DepthEnable
深度テストを行うかを指定するフラグになります。 trueでテストを行います。
- DepthFunc
D3D11_COMPARISON_FUNCを使い、深度テストを行う際の元データと上書きするデータ同士での比較方法を指定します。
ドキュメント:D3D11_COMPARISON_FUNC (日本語) (英語) - DepthWriteMask
D3D11_DEPTH_WRITE_MASKを使用して深度データを書き込む際のマスクを設定します。 D3D11_DEPTH_WRITE_MASKは今のところ書き込むか書き込まないかの2種類用意されています。
ドキュメント:D3D11_DEPTH_WRITE_MASK (日本語) (英語)
ステンシルテストの設定
次に、ステンシルテストの設定は以下のメンバで行います。
D3D11_DEPTH_STENCIL_DESC ステンシルテストに関係するメンバ
- StencilEnable
ステンシルテストを行うかを指定するフラグになります。 trueでテストを行います。
- StencilReadMask, StencilWriteMask
読み込む部分または書き込む部分を指定するマスク値になります
- FrontFace, BackFace
深度テストとステンシルテストの結果でどのような処理を行うかを設定するものになります。 表面と裏面別で設定でき、D3D11_DEPTH_STENCILOP_DESCで指定します。
ドキュメント:D3D11_DEPTH_STENCILOP_DESC (日本語) (英語)D3D11_DEPTH_STENCILOP_DESCのメンバ
まとめ
このパートでは出力結合ステージの深度テストとステンシルテストについて見てきました。 深度テストを使うことでカメラから近いものだけが描画できるようになったり、ステンシルテストで好きな部分だけを描画することができるようになります。
重たいピクセルシェーダや上書きされるピクセルが多い場合はカメラから一番近いものだけに対してだけピクセルシェーダを実行できるよう、事前にZバッファだけに書き込むというZプリパス(英訳:Z Pre-Pass)という手法も存在します。
また、深度テストはその性質から前パートで説明したブレンディングと相性が悪いものになります。 ガラスといった半透明なものや眩しさを表現するために加算合成を行ったパーティクルの描画を行う際は深度テストを切らないと正しい結果が得られません。
以上から、行いたい処理によって深度ステンシルステートとブレンドステートを切り替える必要がありますので注意してください。
補足
Early Z
最近のGPUにはピクセルシェーダを実行する前に深度テストを行うEarly Zと呼ばれる機能が存在します。
ピクセルシェーダのエントリポイント前にearlydepthstencil属性を指定することでEarly Zの機能を使うことを宣言します。
ドキュメント:earlydepthstencil
(日本語)
(英語)
この機能を使用することで不要なピクセルシェーダの実行を減らすことができ、実行速度が速くできる様になります。
制限事項として、この機能を使った場合はZバッファへの書き込みはできないため、深度バッファに書き込まない深度ステンシルステートを作成する必要がありますので注意してください。
また、効率的な深度テストのやり方については以下のリンクで詳しく説明されています。
GPUによっては内部でZバッファの階層構造を生成し、深度テストの効率化を図るものも存在しているみたいです。
そのようなこともリンク先にかかれているので、是非御覧ください。
Depth in-depth(英語)
ID3D11DepthStencilViewのクリア関数
深度ステンシルビューを表すID3D11DepthStencilViewにも専用のクリア関数が用意されています。
ドキュメント:
ID3D11DeviceContext::ClearDepthStencilView
日本語
英語
<前 | トップ | 次> |